グルテンの正体

グルテンは小麦のたんぱく質の1種です。
グルテンという言葉になじみがない人も多いと思います。
その理由は、テレビ番組などではなかなかグルテンをテーマに取り上げないからです。
スポンサーや理研が絡んでいるため小麦を避けようと言えないのです。

そこで今回はグルテンの基礎を掘り下げていきます。

小麦食品は、パン、パスタ、マカロニ、ビスケット、洋菓子、スナック菓子、うどん、十勝そば以外のそば、団子、一般もカレールー、米粉パン、餃子、シュウマイ、揚げ物の衣などです。
ちなみに米粉パンは意外かもしれませんが、米粉パンという名前があっても米粉だけでできているパンとは限りません。

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ではグルテンとは何かを説明します。
まず、精製小麦の成分は、水分が14%、糖質が75%、食物繊維が3%、たんぱく質が10%、脂質が2%。
このたんぱく質のうち80~85%がグルテンで占めています。
グルテンとは、グリアジンというたんぱく質とグルテニンというたんぱく質が繋がったものです。
グルテンというたんぱく質があるわけではなく、この2つのたんぱく質の総称なのです。
骨格をグルテニンが作り、間をグリアジンが埋め尽くしている構造になっており、構成比はグリアジンが50%グルテニンが50%になっています。

グルテンによる影響はほとんどグリアジンによるものでグルテニンではありません。
グリアジンはべとべとする粘性と伸ばすことができる伸展性のあるたんぱく質でプロラミンの一種です。

グリアジンはプロラミンの一種でグルテニンはグルテリンの一種です。
グルテリンは引っ張ったり元に戻そうとしたりゴムのような弾性のあるたんぱく質です。
プロラミンの種類は、小麦のグリアジン、大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、トウモロコシのゼイン、オート麦のアベニンです。
小麦、大麦、ライ麦、オート麦など麦系はグリアジン類似作用と言い構造が似ています。
そのため、グルテンフリー食品は、小麦のグリアジン、大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、オート麦のアベニン、それぞれのグルテリンを含めてこれらすべてを除去したものまたは含有していないものとアメリカのFDAやCODEX委員会が定義しています。

グルテンに対して反応する病気がセリアック病です。
セリアック病とは、欧米人の約1%が罹患している自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、免疫反応が過剰に反応し、敵でない味方である自分自身の正常な組織や細胞まで攻撃して傷つけてしまう病気です。
プロラミンの特にグリアジンに反応し、リーキーガットや小腸の絨毛の萎縮と破壊や粘膜炎症を引き起こします。
正常な絨毛にはひだができていて面積が広いので栄養吸収の効率が良いのですが、セリアック病の絨毛はほとんどひだがなく吸収面積が小さいため吸収不良が必ず起きます。さらに炎症が起きやすくなるのです。

セリアック病でも小麦アレルギーでもなくても過敏に反応してしまう症状があります。
それは、非セリアックグルテン過敏症です。
略してNCGSと言い、セリアック病でも小麦アレルギーでもなく、小麦食品やグルテンに対して不快な症状が現れることです。
イギリスの調査では、イギリス人の約13%が罹患しているということが分かっています。
症状は、セリアック病と似ていて、下痢、胃痛、膨満感、上腹部の痛み、便秘、不安感、鼻炎、疲労感、湿疹、発疹、貧血、うつ、頭痛などです。
非セリアック病とグルテン過敏症は別物と言われていましたが、セリアック病はグルテン過敏症の1部だという説も出てきています。

グリアジンに過剰に反応してしまう理由を解説します。
栄養を吸収する腸の上皮細胞にグリアジンの未消化ペプチドが来てしまうとCXCR-3に結合します。
すると、そのまま取り込まれて上皮細胞内にあるゾヌリンというたんぱく質を放出させてしまうのです。
放出されたゾヌリンは上皮細胞の得意的な受容体に結合してしまい新しい化合物を作ります。
この新しい化合物はタイトジャンクションという接合因子を分解してしまいます。
それによって上皮細胞間に隙間ができ、未消化物がその隙間を通過し毛細血管まで届いてしまうので、免疫細胞が反応し異物とみなし炎症反応を起こしてしまうのです。
グリアジンは、隙間をあけリーキカットを起こし炎症を起こしてしまうという流れがあるということです。

1型糖尿病の両親を持つ生まれたばかりの子供を対象にしたドイツの研究では、生後3ヶ月までにグルテン入りのシリアルを与えられた子供は母乳のみを飲んだ子供に比べて膵臓のランゲルスハンス島の自己抗体を発症するリスクが高いという結果が出ています。
こうして自己免疫反応を起こすのです。
またグルテンの摂取は抗炎症に働くTレグ細胞を減少させ、自己免疫疾患に働く炎症性のTh17細胞を増加させるということも分かっています。
グルテンそのものがセリアック病の発症因子だということも分かっており、1型糖尿病の発症にも影響を与えている可能性があります。

最近はグルテンフリーダイエットが流行っています。略してGFDです。
ヨーロッパの調査では、2014~2019年の間にグルテンフリー食品の市場経済が10%も伸びたという報告があります。
スウェーデン1031人のグルテンフリーダイエット実施後のアンケートによると、腹痛、膨満感、疲労、うつ、頭痛、胸やけ、発疹、抜け毛など関節痛以外の症状がほぼすべて緩和または改善したということが分かっています。
アメリカで26人のグルテン感受性患者、42人のセリアック病患者、39人の消化不良対照患者にグルテンフリーダイエットを実施すると、グルテン過敏性による症状は数日以内になくなったという報告もあります。
これだけでなく、グルテンフリーダイエットの効果は各国でいろいろ報告されています。
しかし、グルテンフリーダイエットにも落とし穴があります。
イタリアの研究では、グルテンフリーダイエットの食事をすると、ビタミンB12、葉酸、鉄、亜鉛、マグネシウムなどの栄養不足に陥りやすいことが判明しています。
これはグルテンフリーダイエット用の加工食品に集中してしまうためです。加工食品はグルテンフリーの恩恵はありますが、ビタミンやミネラルは少なくなっています。
このようなデメリットが高くなってしまうことがあるので、食事療法は注意してほしいです。
欧米から来るものは、ファッション性やトレンドがあるため、真似をしやすいですが極端にしてしまうとデメリットもあるのです。

誰もがグルテンを避けるべきかという疑問を持つ人もいると思います。
そのような場合、まずはグルテンフリーを試し症状を確認してみるという考え方を持ってください。
試してみても症状が変わらないのであればグルテンのせいではありません。もし、試してみて症状が改善したのであればグルテンの影響を受けていたということになります。
またはグルテンフリーダイエット実施後に、再度小麦食品を食べてみて、調子が悪くなればグルテンの影響を受けているということが分かります。

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