BCAAと筋合成の真実

BCAAのサプリメントは、一般に筋合成を刺激しアナボリックを促進するものだと信じ れられてきていました。しかし、理論的には、post-absorptive stateと呼ばれる、食べ物 をエネルギーとして使っている状態では、BCAAだけの摂取は、筋分解が筋合成を30% 上回るといわれています。(つまり、筋肉が減ってしまうということ。) なぜなら、BCAAだけの摂取をすると、BCAA以外の必須アミノ酸が相対的に欠乏し、 新しい筋合成をするために、それらの足りない栄養を他の筋肉を分解することによって 補おうとするからです。現実的には、筋分解から栄養を生み出す最中にアミノ酸の酸化 が生じ、さらに筋合成が難しくなります。(酸化すると筋肉への吸収が妨げられてしまう。)

問い
BCAAの単体の摂取は、筋合成を促すよりかはむしろ筋分解を促進させてしまうのでは ないか?

結論
BCAA単体での摂取は、筋合成にプラスに働くとは言い難いです。少数の研究ではあり ますが、BCAA単体での摂取は、人間において、筋合成の非効率化を招いてしまうこと がわかっています。この論文では、BCAAのサプリの単体での摂取は、筋肉のアナボ リックを促さないと結論づけました。


健康な18~34歳の20人を対象にしたイエール大学の1990年の研究では、BCAAの血中濃 度と筋合成、筋分解の関係性を調べました。 研究結果では、 ・BCAAがアナボリックを促進すること。 ・筋合成のターンオーバーが遅くなったこと。(統計的にも、95%の確率で減少するこ とがわかった。) が証明されました。

 

同じ研究者が、8人の異なる被験者を16時間に及ぶBCAAの筋合成を調べる研究を行い ました。 得られた結果は以下の通りです。 ・研究1と同じように、筋合成のターンオーバー(生まれ代わりサイクル)が遅くなり、 カタボリックの状態が続いてしまった。

 


Journal of Parenteral and Enteral Nutritionの研究(1995)では、BCAAと糖質を一緒にとった 場合に、筋合成の効率は落ちてしまったことがわかりました。この研究から、BCAAと 糖質をともにとってトレーニングを行っても、アナボリックに対する特別な効果がない ことが示された。

 


BCAAとホエイプロテインをともに摂取した研究では、(アメリカ臨床栄養学会誌 (The American Journal of Clinical Nutrition)が40人の男性に対し行った研究)5gのBCAAを6.25g のホエイプロテインドリンクに混ぜたものを摂取した際に、筋合成の効率が、ホエイプ ロテインだけを25g摂取した時と同じになりました。 このことは、ホエイプロテインとBCAAをともに摂取した場合に、筋合成の効率が高く なり、アナボリックに効果的である可能性を示しました。

 


The Journal of physiologyは、バリンとイソロイシンそれぞれとアナボリックの関係がな いことと、ロイシン単体とアナボリックに関係性があることを示しました。 ここから、BCAAよりも、ロイシン単体の方がいいのではないかという仮説は生まれる 可能性はありますが、この研究結果には、以下の懸念点があります。 1、単体での摂取は、ロイシンでも、BCAAの研究と同じように、その他の栄養の枯渇 から、筋合成を抑制してしまうのではないか。 2、血中ロイシン濃度が高いと、他の体内の栄養素を酸化してしまうのではないか。 理論的には、BCAAが筋肉細胞に運ばれる経路は全て同じであり、血中ロイシン濃度が 高くなってしまうと、他の栄養素が運ばれない原因となる可能性があり、バランスのと れたアミノ酸を必要とする筋合成では、ロイシン単体での摂取は好ましくないとされて います。


University of Cincinnati Medical Centerの研究では、怪我をした66匹のラットに、どの程 度の割合のBCAAを含んだバランスのとれた必須アミノ酸を摂取させると、筋合成が効 率的に働くかを研究しました。 (※ラットは睡眠時以外常に動いている特性があり、運動時のBCAA摂取について考察 していると考えられます。そこで、私はこの結果を人間のトレーニング時の栄養摂取に 対しても応用できる結果であると考えています。)

研究方法は、ラットにAminosynというバランスのとれた必須アミノ酸栄養商品に、 BCAAの比率を変えたものを摂取させ、筋合成効率を調べるというものでした。 ラットを無作為にグループ分けし、40%, 45%, 50%のBCAAが入ったAminosynを4日間摂 取したラットの筋合成効率を比べました。

上の図は、それぞれ40%, 45%, 50%のBCAAを配合したAminosynを摂取したラットの筋 合成値を示したもので、これが高いほど筋合成が行われています。(データは統計的に 優位で信じられるもの。) 一見、50%が一番高いように見えますが、上でも議論した通り、BCAAの取りすぎは、 筋分解を促進させてしまうため、筋肉は作られているが、かなり減ってもいる状態であ ると予測されます。つまり、50%のものは、45%のものと筋合成量が変わらないのに筋 分解が多く起こっている状態です。 BCAA量に対して、筋合成効率は45%が一番高く、40%だと低すぎる、50%だと高すぎ る結果となりました。トレーニング時の必須アミノ酸を摂取する際には、45%という BCAAの比率の摂取が人間にも効果的かもしれません。

 

まとめ

・トレーニング時のBCAA単体での摂取は、カタボリックを促進してしまうこと。
・BCAAとホエイタンパク質をともに摂取するとホエイタンパク質だけを摂取した時に 比べ、筋合成が4倍になること。
・人体に置いても、BCAAを他の必須アミノ酸(BCAA以外のEAA)と摂取する場合、 BCAAの量を45%に調整すると筋合成の効率が一番高くなる可能性が高いこと。

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