前庭小脳(機能・神経回路)

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小脳は以下の3つに分類できる。

・前庭小脳
・脊髄小脳
・大脳小脳

このうち、前庭小脳は最も古い原始的な部位であり、ヒトが運動するためになくてはならない。ちなみに、いわゆる「小脳出血」「小脳梗塞」と呼ばれる症状では、この前庭小脳が損傷しているケースも見られる。

1)機能

・前庭小脳は、頭部の動きと視覚情報を統合して、眼球運動及び平衡機能を調整するという役割を担っている。ここでの眼球運動とは、次の3つがある。

・衝動性眼球運動(瞬時に網膜内に映る像を固定する)
・滑動性追従眼球運動(網膜内に映る像を捉え続ける)
・輻輳・閉散(両側の眼球を同時に内転・外転)

こうした眼球運動において、前提小脳は眼球が頭部の動きと反対方向に動く「前庭動眼反射」と呼ばれる活動を調整し、滑動性追従眼球運動を調整する。

(1)前庭小脳と眼球運動の関係性

例1:自分の歩いている前方から、人が向かってきた場合(前提動眼反射が働くケース)

歩いてくる人との接触を避けるため、自分の頭を左右に動かしつつ目で向かってくる人を追いかける。その際、向かってくる人が自分から見て右に動いたとき、左側に頭・体を動かして移動することで、向かってくる人を回避する。

逆に頭・眼球が左に動くと、向かってくる人を目で追えなくなってしまう。こうしたケースで前庭動眼反射が活動し、眼球が頭の動く方向とは逆向き(=右側)に動き、向かってきた人を目で追えるようになる。

例2:自分が歩いているとき、向かって右側から自分を呼ぶ声が聞こえた(前提動眼反射が抑制されるケース)

頭を正面から右側に動かすと、同時に眼球も右側に動かして、自分を呼ぶ声がする方を見ることができる。しかしここで前庭動眼反射が活動すると、頭が右側に動いたきに眼球が反対方向を向くよう働く。

前庭動眼運動反射の抑制することで、頭と眼球が同じ方向に動かすことができるようになる。

(2)左右の前提小脳の働き

右の前庭小脳は頭が右に動いたとき、眼球が左に動く前庭動眼反射の活動を抑制することで眼球を右に動かす。左の前庭小脳は頭が左に動いたとき、眼球が右に動く前庭動眼反射の活動を抑制することで眼球を左に動かす。

2)前庭小脳と平衡機能の関連性

前庭小脳は頭部の動きと視覚情報を統合し、眼球運動と平衡機能を調整している。歩行や不安定な床面で頭部の傾きや回転+視覚情報が変化したとき、前庭小脳が誤差信号を検出し、前庭神経核を介して外側※-内側前庭脊髄路※を駆動し頭頸部・体幹・四肢の筋緊張を調整することで平衡機能を務める。

※外側前庭脊髄路
同側半身の筋活動を促通することで姿勢を制御する。筋活動を抑制する作用はなく、促通する作用のみを有する。

※内側前庭脊髄路

両側頭頸部の筋活動を促進あるいは抑制することで姿勢を制御する。

3)神経回路

①半規管(頭部の回転を感知)の情報と、頭部の耳石器(頭部の直線加速度および傾きを感知)の情報が、前庭神経を介して前庭神経核に届けられる。

②前庭神経核の情報は下小脳脚を通過し、苔状繊維を介して前庭小脳の顆粒細胞に入力される。同時に視覚情報も下小脳脚を通過し、苔状繊維を介して前庭小脳の顆粒細胞に入力される。

顆粒細胞の情報は、顆粒細胞が軸索を情報にのばして形成された平行線維を介してプルキンエ細胞に透視し、プルキンエ細胞を高頻度に興奮させる

この時、頭部の傾きや回転する運動として視覚情報に誤差信号がない場合、プルキンエ細胞が活動して前庭神経核の活動を抑制することで、前庭動眼反射、前庭脊髄路を抑制する。

誤差信号があった場合、登上線維に入力されてプルキンエ細胞に透視する。平行線維が抑制されてプルキンエ細胞が高頻度に興奮しなくなると、前庭神経核が活動して前庭動眼反射、前庭脊髄路が活動する。

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