モーターコントロール(運動制御)は、「運動の幹的メカニズムを統制もしくは指揮する能力」や、「運動するために必要なさまざまな機構を調整する能力である」と定義されている。
ここでいう「制御」とは、身体を思い通りに動かすという意味であり、運動を行うためには脳・脊髄(中枢神経系)の機能や情報伝達、あるいは運動時の環境や知覚・認知が大きく関わっている。
ちなみに、モーターコントロールにおける運動はスポーツやトレーニングを指すのではなく、歩く、走る、手を伸ばす、物品を操作する、食べるといった生活時のあらゆる動作・行動を意味する。
1)骨盤のモーターコントロール
①高い姿勢を保ち、軽く膝を曲げる。また、その際動作する部位(背骨の最下部、股関節)を手で確認する。
②他の部位が動かないよう意識して、骨盤を前後・左右に傾ける。
2)腰椎のモーターコントロール
(1)前方への動作
①腰椎周辺(ランバーフロントサークル)をさすり、感覚刺激を入れる。
②足を肩幅に広げて軽く膝を曲げ、腰から上半身を側屈させる。
③腕・頭部を脱力させ、腰を支点に上半身で半円を描くように、約10秒かけて対側に動かす。
④対側の側屈から元の姿勢に戻る。
横からの様子
⑤反対周りも同様に行う
(2)後方への動作
①立位で足を肩幅に開く、手は前方で組み、腰を支点に上半身を側屈させる。
②膝を軽く曲げ、前方へ出して上半身で後方に円を描くように動く。前方への動作と同様に、対側の側屈の姿勢になったら、元の姿勢に戻る。
③反対側も同様に動かす。後方で円を描く際、目線は天井を向けるとやりやすい。
2)胸椎のモーターコントロール
(1)前後へのグライディング
①ハンガーや棒など、物を使って胸椎に感覚刺激を入れる。また上半身前面からも触れて、胸郭全体を意識する。
②足を肩幅に広げ、姿勢を正して胸椎を後弯させる。
③胸骨を広げるイメージで胸を反らせる。後弯〜反らせる動作では、腰が動かないように意識する。
(2)左右へのグライディング
①手と物を使い、身体前面・後面から胸椎に感覚刺激を入れる。
②腕が左右に引っ張られるイメージで、胸部をスライドさせる。その際、骨盤は同じポジションを維持する。
③次は腕を下ろして左右へスライドさせる。その際、対側の肋骨を締めるイメージで行う。
(3)サークル運動
①足は肩幅へ広げ、立位の姿勢を取る。
②前後・左右のグライディングを組み合わせて、胸部で円を描く(まずは右→後→左→前へと動かしてみる)。動作中、なるべく肩が動かないようにする。
3)頸椎のモーターコントロール
(1)側屈・頸椎
①首の骨の位置を確認(頭蓋骨の下から、首の根本の突出部)し、当該部の皮膚をこすり感覚刺激を入れる。そして立位で姿勢をただし、軽く顎を引く。
②首を左右に側屈させる。その際、首の根本(頸椎7番)まで動いていることを意識する。
※首と一緒に肩・胴体が動く。また首をまっすぐ側屈できない(顔が前下方・前上方を向いている)などのエラーが出ていないか確認する。
(2)頸椎の回旋
①立位で姿勢をただし、軽く顎を引く。
②ゆっくりと正確な動きを意識して、首を左右に回旋させる。
③真横に回旋できているかを確かめるために、顎の下に板や手を置いてみる。その際、首の根元(頸椎7番)まで動かせているか意識すること。
※首が真横に動いていない(顔が前上方・前下方に動いている)エラーが出ていないか注意すること