可動域のチェック

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1)可動域チェックのポイント

神経への働きかけ(部位は問わない)を行った後、可動域の変化を確認する。可動域の変化は大きく3種類の状態でチェックし、それぞれに応じた適切なケアを行なう。

(1)可動域が広がった

神経の作用が改善され、局所的な筋肉の働き・感覚が改善されることで、可動域が広がる。局所的な可動域の問題が改善されると、脳の潜在的ストレスが減少し、全身の可動域も改善されやすい。同じ種類のワークでもっとも効果がでた方法を、1日のなかでもこまめに続けるよう指導する。

(2)可動域の変化がなかった

脳・神経にとっての影響が少なかったといえる。神経へのテンションがかかったかを確認し、やり方を変えたり別のワークを試したりする。

(3)可動域が狭くなった

実施したワークが、脳に「危険な刺激」と判断された場合、可動域が狭くなるといった反応が起こりやすい。対側のストレッチ、スラッキング、スライディングを行ったり、別の方法を試してみる。もしも痛みが生じた場合は、ワークをすぐ中断する。

2)痛みが発生した場合のチェック

身体のどこかに痛みを覚えるときは、その度合いを確かめる。客観的な判断をするため、次の2点を意識すること。

①痛みを感じる動きはなにか
②痛みの度合いを数字に置き換えるとどうなるか

(例)肩の外転で痛みが出る
・痛みを最大10として、どれくらいかを確認(相手の主観で答えてもらう)
・神経ワーク後、数字の変化がどうなるか確認する。もしも痛みが6から3に減ったのなら、効果が出ていると捉える。

3)神経ワークを始める部位

全ての神経でワークを行なう前提として、その順序は次のように始めるといい。

(1)痛みや不調に関連する神経

痛みのある筋肉やその近くにある神経を調べて、そこを動かしてみるところから始める。

(2)過去にケガや手術をした部位周辺

すでに治っているケガでも、脳は「ここを動かすと危険」と判断し、痛みが出るケースは多い。特に傷ついた侵害受容器の軸索が、危険信号を脊髄・脳に送り続けている可能性もある。

危険信号は痛みのほか、筋肉の弱化、拘縮などで表れ、パフォーマンスを低下させる要因となりえる。

(3)柔軟性を高めたい部位に関わる神経

神経は、多様な動きで伸縮性を発揮できる状態にしておきたい。しかし動きの足りない場所があると、無意識に当該動作を避けた動きになりやすい。

柔軟性を高めたい部位に該当する関節を通過する神経を動かし、動作性が改善されるかを確認する。

神経ストレッチは潜在的に、筋肉の働きを良くする効果も期待できる。筋力に変化が起これば、柔軟性も変化しやすいからだ。このアプローチを行なう際は、伸ばしたい筋肉の神経、あるいは拮抗筋の神経を動かしてみる

(4)スポーツや筋トレでこれから動かす筋肉の神経

その場で筋力アップが期待できる。その動作で使うことが多い部位から、その動作に該当する神経にアプローチする。

(5)動作の変化を楽しめるワークを意識する

1〜4のワークを行なうことで、クライアントに「自分はこれだけ動ける」という経験を積ませる。それにより、不調時に自分で動作を改善する方法を自分で見つけ出しやすくなる。

4)感覚テスト・感覚トレーニング後の可動域チェック

各神経の感覚テストおよび感覚トレーニングを行った後、可動域のチェックで改善されたかを確認する。皮膚感覚、筋出力のチェックでも問題ないが、可動域チェックの方がより顕著に変化を感じやすい。

身体動作は屈筋・伸筋のバランスで成り立つ。仮に腕の屈筋群の働きがよくなった=腕の屈曲がスムーズになるというわけではない。屈筋群の働きがよくなり、伸筋群とのバランスが取りやすくなることで、全体的に関節のポジションが改善され、屈曲だけでなく伸展動作もスムーズになるという現象が起こる。仮に腕の屈筋群の感覚トレーニングを行ったあとは、屈曲動作だけでなく回旋・伸展などすべての動作の改善が見られたかを確認する。

5)全身の可動域チェック

①足を肩幅に広げ、姿勢をただす
②親指を上にして腕を伸ばし、肩の屈曲・外転動作を行う。左右でそれぞれ数回ずつ行い、動作の比較をする(回数を重ねるといずれの動作もよりスムーズに行えるようになるため、それらの誤差も踏まえ客観的に判断する)

可動域チェック1

③②と同様に、肩の伸展動作(腕を後に引く)を行う。左右でそれぞれ数回ずつ繰り返し、動きにくさ、可動域、痛みの有無を確認する。

可動域チェック2

④肩の内旋・外旋動作を行う。左右でそれぞれ数回ずつ繰り返し、動きにくさ、可動域、痛みの有無を確認する。

可動域チェック3

⑤姿勢をただした状態で、頚部を左右に側屈・回旋させる。腕に関連する神経が多数通る頚部は、腕の神経の感覚トレーニングを行うと、連動して可動域が改善されるケースが多いためである。

可動域チェック4

⑥立位で姿勢をただし、前方で手を合わせる。そのまま腕をまっすぐ伸ばしたまま体幹の回旋動作を左右で行う。腰椎・胸椎も動作に関連するため、脚部へ走る神経の感覚改善を確かめるのに役立つ。

可動域チェック5

⑦立位の姿勢から前屈を行う。筋や腱の硬さだけでなく、脛骨神経の弾性が失われていることで床に手がつかないというケースも多い。この動作で硬さが見られた場合、脛骨神経のスライディング、ストレッチで動作が改善される可能性がある。

可動域チェック6

⑧開脚運動による内転筋群のストレッチを行う。当該部に関連する閉鎖神経が可動域に関連する。

可動域チェック7

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